【副業300万円以下】パブリック・コメント制度と今後の雑所得について

2022年8月1日に案の公示がされた『「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)』が税理士業界・フリーランス等の間で話題となっております。

パブリック・コメント制度(パブコメ)と雑所得の改正の影響について記事にしたいと思います。

本業がサラリーマンで、副業を事業所得として申告している方には影響が大きいと思います。

目次

パブリック・コメント制度とは

パブリック・コメント制度

国の行政機関は、政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。
これら政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリック・コメント制度(意見公募手続)です。

【※引用元 e-Govパブリック・コメント】

つまり、パブコメとは行政機関が法律上のルールを定めるとき一般の方から意見を求め、その中で反映できるものがあればその意見に基づきルールの修正をする制度となります。

手続きの流れは次のようになります

  1. 案の公示
  2. 意見公募
  3. 意見を考慮
  4. 結果の公示

意見公募の受付締切は、2022年8月31日となります。

詳しく知りたい方はこちらとなります。

公示の内容

「意見公募要領」は次のようになっております。(引用元 国税庁)

改正の背景
 国税庁においては、シェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動に係る所得」や「副業に係る所得」について、適正申告をしていただくための環境づくりに努めているところ、これらの所得については、所得区分の判定が難しいといった課題がありました

改正案の概要
 上記の課題に対応するため、所得税基本通達を次のとおり改正し、雑所得の範囲の明確化をします。

 ⑴ その他雑所得の範囲の明確化

  その他雑所得(公的年金等に係る雑所得及び業務に係る雑所得以外の雑所得をいいます。)の範囲に、譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生ずる所得及び山林の譲渡による所得を除きます。)が含まれることを明確化します。

 ⑵ 業務に係る雑所得の範囲の明確化
  業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。
  また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定することその所得がその者の主たる所得でなくかつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。


適用時期
 改正後の所得税基本通達の取扱いは、令和4年分以後の所得税について適用します。

新旧対照表
 所得税基本通達 35-1及び 35-2の新旧対照表は、別紙のとおりです。

適用時期令和4年分からという点も注目です。

改正のポイント(事業所得から雑所得へ変更された場合)

次のいずれにも該当する場合、「反証がない限り」、雑所得となってしまいます。

  1.  所得を得るための活動が、社会通念上、事業と称するに至る程度でないこと
  2.  その所得が主たる所得でないこと
  3.  収入金額(売上高)が300万円以下であること

ざっと思いついた限りですが、事業所得から雑所得へ変更した場合の影響は次の通りです。

青色申告特別控除

事業所得で申告している方は、青色申告であれば最大で65万円の青色申告特別控除があります。
経費が最大で65万円なくなるので、これは影響が大きいといえます。

損益通算

事業所得において収入金額が必要経費等よりも少ない場合は「損失」が生じることとなります。
この損失は、給与所得などと損益通算できますが、雑所得に区分されるのであれば、以前のような損益通算はできないことになります。

少額減価償却資産の特例

この特例は、10万円以上30万円未満の資産を即時に償却(一年で経費化)できる制度ですが、青色申告の特典となります。
雑所得であれば青色申告は関係ありませんので、この特例も使えません。

専従者給与

青色申告であれば青色事業専従者・白色申告であれば事業専従者控除がありますが、どちらも雑所得であれば使えません。
収入金額が300万円以下の場合で、親族への給与を支払う方は少数派かもしれませんが。

これらのほか、純損失の繰越・繰戻、貸倒引当金の設定などがあります。(青色申告の特典)


青色申告特別控除と損益通算ができないのは痛すぎますね。

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