日本では、個人のあらゆる儲けは10種類の「所得」に分類をして所得税が課税されます。(贈与を除きます。)
個人事業主は事業所得、不動産賃貸業は不動産所得、年金は雑所得、退職金は退職所得といった具合に分類されます。
サラリーマンの場合は、勤務先からの給料・賞与が収入源の「給与所得」という所得があります。
給与所得の求め方
給与所得の求め方ですが、給与収入金額から給与所得控除を差し引いて計算します。
給与収入金額とは、いわゆる年収(総支給額)と呼ばれるものです。
年収1,000万円だからといって、給与所得も1,000万円というわけではありません。
令和3年分の場合は、年収1,000万円であれば、給与所得は805万円となります。
上記の差額195万円ですが、これが「給与所得控除」というものになります。
給与所得控除とは、サラリーマン経費とも言われます。
サラリーマンも仕事に必要な書籍・交際費・旅費などを実費で支払うことはありますが、個人事業主とは違って「経費」の概念がありません。
そこで経費の代わりに「給与所得控除」という控除枠が作られています。
最低でも55万円、最高で195万円の経費が給与所得控除という形で認められています。
ちなみに、多くの方に48万円の「基礎控除」という所得控除があります。(合計所得金額が2,400万円以下の方限定です。)
給与所得控除の下限である55万円に基礎控除48万円を足すと103万円という金額になります。
103万という数字でピンときた人もいるかもしれませんが、所得税の扶養の壁です。
配偶者控除では150万円、配偶者特別控除では201万円の壁があります。
社会保険では106万円(従業員数100人超の企業、2022年10月以降)や130万円の壁もあります。
特定支出控除とは
特定支出控除とは、給与所得控除とは別枠で給与収入金額から控除できるものです。
(確定申告時期に質問の多い項目の一つです。)
特定支出控除における「特定支出」とは、サラリーマンが支払う次のような支出です。(詳しくはこちら)
- スーツ代
- 交際費(クライアントとの食事代・贈り物など)
- 本代
- 資格の受講料 など
サラリーマンが上記のような出費を経費にできるのであれば、非常に素晴らしい制度のように思えます。
しかし、実際はそうではありません。
特定支出控除の恩恵を受けるためには、「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額を超えること」が条件とされています。そして、その「超える部分の金額だけ」が給与所得から控除されます。
「基準となる金額」とは、「その年の給与所得控除額×1/2」です。
給与所得控除とは、2つ目の目次で説明した「年収に応じた55万から195万円」の控除額のことです。
年収に応じた特定支出控除の額の基準額(具体例3つ)
年収400万円の方に年間70万円の特定支出があった場合
年収400万円の方であれば、給与所得控除は124万円(400万円×20%+44万円)なので、その二分の一となる62万円が基準となる金額です。
仮に1年間に70万円の特定支出が生じた場合に、8万円(70万円△62万円)が特定支出控除の額として給与収入金額から控除することができます。
年収400万円の月給を25万円(25万円×(12ヶ月+賞与4ヶ月分))とした場合、賞与を除いた月々の手取りは約20万円です。
お金の使い方は人それぞれだと思いますが、手取り約20万円の中から月平均で6万円前後(70万円÷12ヶ月)の特定支出をする人はほとんど存在しないような気もします。
ちなみに、上記の8万円の特定支出控除で安くなる所得税・復興特別所得税は、年収400万円であれば、4,084円(8万円×5.105%=4,084円)です。
特定支出控除が使えない制度とまでは言いませんが、上記の例のように70万の支出に対して4千円の控除であれば魅力的とは言い難いです。
給与所得控除の金額が適用判定の基準金額となっていますので、高収入であればあるほど適用できる可能性はありそうです。
特定支出控除の申告の方法
特定支出控除の適用を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
下記の3つを添付等して所轄の税務署に申告をすることとなります。
- 給与所得者の特定支出に関する明細書(申告書に添付)
- 給与の支払者(勤め先)の証明書(申告書に添付)
- 搭乗・乗車等に関する証明書や領収書等(申告書に添付または申告書を提出する際に提示)
適用を検討される方は、まずご自身で特定支出控除の額を計算してみましょう。
最後に、特定支出控除まで考慮した給与所得の算定は次のようになります。
給与収入金額−{ 給与所得控除 +( 特定支出額 − 給与所得控除×1/2 )}= 給与所得