前回の評価替えは令和3年でした。
昨年はブログの更新をやっていなかったので、今更ながら記事にしたいと思います。
固定資産税の評価替えとは
固定資産税(都市計画税)を算定する際は、「評価額」をベースとして計算しているわけですが、毎年同額というわけではありません。
地価の上昇等の価格の変化を反映させています。
では、「毎年」価格の変化を反映しているのかというと、そうではなく、「3年に1回」の頻度で反映させています。
この3年に1回の価格の変化を反映させることを「評価替え」といいます。
評価替えのイメージとしては、次のようになります。
- 評価替えにより評価額が増加 → 固定資産税も増加
- 〃 減少 → 〃 減少
厳密には、急激な評価額の上昇に対応した「負担調整措置」がとられるので、
評価額の増減がすぐさま固定資産税の増減に結びつくとは限りません。
ちなみに、固定資産税の税率は1.4%です。(都市計画税を含むと1.7%です。)
なお、住宅用地であれば、評価額に「×1/3」「×1/6」を組み入れた算式となるので、負担額は軽くなります。
前回の評価替えでどのくらい変わったのか(福岡市中央区の場合)
仕事の都合上、固定資産税の納税通知書を見ることはよくあります。
売却・贈与・相続・自社株評価などで使用するためです。
福岡市中央区にある土地の令和3年度の評価替えによる前年度との比較が次の通りです。
正確な数値は伏せています。
令和2年度 230,000,000円(2億3千万円)
令和3年度 370,000,000円(3億7千万円)
実に140,000,000円(1億4千万円)の上昇ですので、パーセンテージでいうと
およそ160%の上昇となります。
天神・赤坂・大名などのエリアでは200%上昇した場所もあります。
このような急激な上昇があっても「負担調整措置」がとられているので、急激に納税額が増えることはありません。
評価額の増減による実務への影響
相続税、贈与税
評価替えがあったからといって、相続・贈与への実務への影響が大きいわけではありません。
理由としては、都市部の土地(宅地)の財産評価は「路線価方式」で計算するためです。
仮に、路線価方式で計算すべき地域ついて「倍率方式」で相続税・贈与税の計算をすることとなった場合、評価替えの前後で納税額が大幅に増減してしまう可能性があるので、まともなシミュレーションすらできません。
なお、「家屋」については、評価額は減少・据え置きのいずれかになるので、ほぼ影響はないといえます。
消費税、減価償却
不動産の売買があった場合には、売手の消費税や買手の消費税・減価償却には影響がある可能性があります。
不動産の売買で土地と建物の売却価格が一体となっている場合(一括譲渡する場合)、「時価」に基づいて売却価格を按分することになるためです。
その時価の分かりやすい指標に固定資産税の「評価額」があるためです。
消費税法施行令 第45条 課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れに係る消費税の課税標準の額
~省略~
3 事業者が課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項において同じ。)に係る資産(以下この項において「課税資産」という。)と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産(以下この項において「非課税資産」という。)とを同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額(法第28条第1項に規定する対価の額をいう。以下この項において同じ。)が課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする。
⇒課税資産と非課税資産を一括譲渡した場合に、譲渡対価の額が合理的に区分されていないときは、譲渡対価の額を価額の比(=時価比)で按分する というものです。
では、どの時価を使うのか?
- 譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分
- 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
- 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)を基にした按分
などの方法により土地と建物部分に合理的に区分する必要があります。
(参照 国税庁Q&A)
他にも、鑑定評価を入れる方法などがありますが、煩雑さを考えると、固定資産税評価額を利用することが一番多いのではないでしょうか。