社員旅行(レクリエーション旅行)の税務の取扱いについて記事にしたいと思います。
社員旅行の基本的なルール
福利厚生として認められるための3つのルール
社員旅行が経費(福利厚生)として認められるためには、次の3つを満たす必要があります。
日数:旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合は、現地での滞在日数が4泊5日以内であること。
旅行期間が5泊6日以上のものについては、社会通念上一般に行われている旅行とは認められません。
参加割合:旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行は、職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。
半数以上の参加により、福利厚生としての合理性が成立します。
病気・事故などのやむを得ない理由により、急きょ欠員が出た場合は、50%未満であっても大丈夫であると思います。
金額:従業員に供与する経済的利益の額が「少額不追求の趣旨を逸脱しないもの」であること
言い回しが難しいですが、福利厚生の旅行として金銭的に度を超えていないことと考えてください。
金額については明確な規定があるわけではありませんが、あまりに豪華な旅行であれば、福利厚生としての経費性が疑われることはありますのでご注意ください。
所得税法基本通達36-30
根拠法令は、所得税法基本通達36-30となります。
所得税法基本通達36-30 課税しない経済的利益 使用者が負担するレクリエーションの費用
使用者が役員又は使用人のレクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することにより、これらの行事に参加した役員又は使用人が受ける経済的利益については、使用者が、当該行事に参加しなかった役員又は使用人(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を除く。)に対しその参加に代えて金銭を支給する場合又は役員だけを対象として当該行事の費用を負担する場合を除き、課税しなくて差し支えない。
(注)上記の行事に参加しなかった者(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を含む。)に支給する金銭については、給与等として課税することに留意する。
「使用者の業務の必要に基づき」=「会社都合」により不参加となった人への金銭の支給と、自己都合により不参加となった人への金銭の支給の取扱いは、どちらも給与課税となります。
しかし、後者の場合は注意が必要です。
詳しくは以下の通りです。
社員旅行でも給与課税される可能性があるもの
自己都合により不参加だった人への金銭の支給
自己都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、不参加者だけではなく参加者を含めた全員に対して、
その不参加者に支給する金銭の額相当の給与の支給があったものとされます。
不参加者への金銭の支給は避け、妥当な金額のお土産を渡すくらいにとどめておきましょう。
「会社都合」により不参加となった人に金銭を支給する場合は、その不参加者だけに給与課税が発生します。
社員旅行とは考えられない旅行
- 役員だけで行う旅行
- 取引先に対する接待目的の旅行
- 私的旅行と認められる旅行
- 金銭との選択が可能な旅行
取引先への接待目的であれば、給与課税のほか、交際費課税になることもあります。
家族旅行が福利厚生費になる余地はあるのか?
同族会社で家族が役員・使用人となっているケースで考えてみましょう。(親族以外の従業員はゼロ人)
日数・参加割合・金額の3つの要件をクリアするのは簡単だと思います。
- 夫婦がともに役員の二人だけの会社
⇒「役員旅行」と判断され、役員給与とみなされるでしょう。 - 夫婦がともに役員で、子どもが使用人(従業員)の三人だけの会社
⇒使用人も混じっているため「役員旅行」ではないと主張したい気持ちはわかりますが、「私的旅行」と判断され、給与課税されるでしょう。
勤労意欲の向上・慰安・親睦を深めること などが目的の社員旅行ではなく、「研修」「視察」を目的とした旅費であれば、経費の余地はあります。
当然、研修旅行等の場合も実態は求められますので、レポート・写真・パンフレット・日程表など第三者が見ても説明のつく資料は準備・作成する必要はあります。
ワーケーションの取扱いについて
ワーク(仕事)+ バケーション(休暇)を組み合わせた造語となります。
テレワークやリモートワークなどを活用して、リゾート地などで働きながら休暇を取るという新しい働き方(過ごし方)です。
実際には、企業での導入は難しいようで、あまり普及はしていないようです。
同じ会社でも仕事内容によってワーケーションが可能な人と不可能な人が出て来るため、従業員間での不公平感も否めません。
ワーケーションの税務上の取扱い
会社がワーケーションの費用を負担する場合、職務遂行のための旅費等は、通常必要とされる範囲内の支出であれば、給与課税されないという見解があります。
私的旅行の合間に一時的に業務を行う場合の、旅費交通費などの諸経費を法人が負担した場合の取扱いはどうなるか?
- 旅費・宿泊代
⇒あくまで主たる目的が旅行であれば、その費用は個人が負担すべきなので、給与課税されます。 - 通信費
⇒Wi-Fi機器を業務を行うためにレンタルした場合は、経費となります。
プライベートで使うためであれば、給与課税されます。 - 飲食代
⇒家族や友人との飲食であれば、給与課税されます。
休暇先での取引先への接待であれば交際費となりますが、シチュエーション的にあまりないかと思います。
そのため、単なる休暇先での一時的なリモートワークにとどまる程度であれば、給与課税されるものと考えられます。
以上、【福利厚生費】社員旅行を経費にするための要件について でした。
(参考:従業員レクリエーション旅行や研修旅行(国税庁ホームページ))