前回に引き続き、所得拡大促進税制(中小企業向け賃上げ促進税制)について記事にしたいと思います。
今回の内容は、雇調金の取扱いです。
※青色申告の中小企業者についての記事となります。
雇用調整助成金(雇調金)の取扱いについて
雇用者給与等増加額の判定の際は、雇調金は控除しない
下記の「給与の増加額」が1.5%(2.5%)以上か否かの判定をするときは、雇調金の金額を控除しません。
雇用者給与等支給額 - 前期の雇用者給与等支給額
≧ 1.5% or 2.5%
前期の雇用者給与等支給額
控除額を算定する際は、雇調金を控除する
控除額を算定する際は、控除対象雇用者給与等支給増加額に15%~40%を乗じて算定しますが、
その増加額が調整雇用者給与等支給増加額を超える場合には、その調整増加額に15%~40%を乗じて算定します。
次の①から②を控除した金額のことです。
① 雇用者給与等支給額(その雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額(雇調金)がある場合には、その雇調金を控除した金額)
② 比較雇用者給与等支給額(その比較雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額(雇調金)がある場合には、その雇調金を控除した金額)
雇調金がある場合の計算シミュレーション
控除対象雇用者給与等支給増加額 < 調整雇用者給与等支給増加額 の場合
当期 雇用者給与等支給額 5,000万円(うち雇調金500万円)
前期 比較雇用者給与等支給額 4,500万円(うち雇調金800万円)
(5,000万円 – 4,500万円)/ 4,500万円 = 11.1% ≧ 1.5%
※上乗せ要件である「給与の増加額が前年比で2.5%以上」を満たしていますが、割愛します。
A 控除対象雇用者給与等支給増加額
5,000万円 – 4,500万円 = 500万円
B 調整雇用者給与等支給増加額
(5,000万円 – 500万円)-(4,500万円 – 800万円)=800万円
① STEP2の A < B により、調整増加額の方が大きいため、Aの500万円に控除率を乗じます。
② 500万円×15%=75万円が税額控除額となります。
※ 税額控除額は、法人税額×20%を上限とします。
控除対象雇用者給与等支給増加額 > 調整雇用者給与等支給増加額 の場合
当期 雇用者給与等支給額 5,000万円(うち雇調金800万円)
前期 比較雇用者給与等支給額 4,500万円(うち雇調金500万円)
(5,000万円 – 4,500万円)/ 4,500万円 = 11.1% ≧ 1.5%
※上乗せ要件である「給与の増加額が前年比で2.5%以上」を満たしていますが、割愛します。
A 控除対象雇用者給与等支給増加額
5,000万円 – 4,500万円 = 500万円
B 調整雇用者給与等支給増加額
(5,000万円 – 800万円)-(4,500万円 – 500万円)=200万円
① STEP2の A > B により、控除対象増加額の方が大きいため、Bの200万円が上限となります。
② 200万円×15%=30万円が税額控除額となります。
※ 税額控除額は、法人税額×20%を上限とします。
調整雇用者給与等支給増加額がマイナスの場合
当期 雇用者給与等支給額 5,000万円(うち雇調金800万円)
前期 比較雇用者給与等支給額 4,800万円(うち雇調金200万円)
(5,000万円 – 4,800万円)/ 4,800万円 = 4.1% ≧ 1.5%
※上乗せ要件である「給与の増加額が前年比で2.5%以上」を満たしていますが、割愛します。
A 控除対象雇用者給与等支給増加額
5,000万円 – 4,800万円 = 200万円
B 調整雇用者給与等支給増加額
(5,000万円 – 800万円)-(4,800万円 – 200万円)=▲400万円
① STEP2の B 調整雇用者給与等支給増加額がマイナスのため、税額控除額は無し。
増加額の判定、控除額の算定の際に控除するもの
雇用調整助成金(雇用安定助成金)については、雇用者給与等増加額の判定の際は控除せず、控除額の判定の際は控除するものでした。
上記のどちらの判定の際も控除する補助金・助成金は次のとおりです。
業務改善助成金
労働移動支援助成金(早期雇い入れコース)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
これらの補助金等は「給与負担金」と同じく「他の者から支払を受ける金額」として、雇用者給与等増加額の判定の際も控除額の判定の際も控除します。
以上、【令和4年4月1日以後開始】賃上げに伴う雇用調整助成金の取扱い についてでした。