私立の学校にお勤めだった方が亡くなったときに、日本私立学校振興・共済事業団(私学共済事業)より、「遺族一時金」なるものが支払われることがあります。
この遺族一時金について記事にしたいと思います。
相続財産として取扱う
遺族一時金は「みなし相続財産」に該当するため、相続税の課税対象となります。
みなし相続財産とは、民法上は相続財産ではなくても、相続税法上は財産とみなして扱うものです。
被相続人が生命保険に加入していた場合の「死亡保険金」が有名です。
相続税法 第3条 相続又は遺贈により取得したものとみなす場合 かっこ書きは省略
次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
一 被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約の保険金又は損害保険契約の保険金を取得した場合においては、当該保険金受取人について、当該保険金のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
二 被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与
以下省略
第一号が「生命保険金(死亡保険金)等」で、第二号が「死亡退職金等」となります。
遺族一時金は上記のうち、第二号の「死亡退職金等」に該当するため、みなし相続財産として扱うことになります。
相続税法施行令 第1条の3 退職手当金等に含まれる給付の範囲 かっこ書きは省略
法第3条第1項第2号及び第10条第1項第6号に規定する政令で定める給付は、次に掲げる年金又は一時金に関する権利とする。
一 国家公務員共済組合法第79条の4第1項又は第89条第1項の規定により支給を受ける一時金又は年金
二 地方公務員等共済組合法第93条第1項又は第103条第1項の規定により支給を受ける一時金又は年金
三 私立学校教職員共済法第25条において準用する国家公務員共済組合法第79条の4第1項又は第89条第1項の規定により支給を受ける一時金又は年金
以下省略
国家公務員共済組合法には、「79条の4 遺族に対する一時金」と「89条 公務遺族年金の受給権者」について定められています。
「お知らせ」にみなし相続財産として扱う旨の記載がある
私が関与した案件では、遺族一時金の支払額について「お知らせ」が書面で届いていました。
一部抜粋すると、次のような文言の記載がありました。
当該支払額については、相続税法第3条1項第2号によりみなし相続財産となり、相続税の課税対象となる場合があります。
「相続税の課税対象となる場合があります。」
課税対象なのかハッキリしていない表現に感じるかもしれませんが、このような記載には理由があります。
次の目次で解説したいと思います。
支払額が非課税枠に満たない場合は、相続税の課税対象ではない
「死亡退職金等」についても生命保険金等と同様に「500万円×法定相続人」の非課税枠が用意されているためです。
そのため、【遺族一時金 < 500万円×法定相続人】 であれば、遺族一時金の支払額については、相続税の課税対象にはなりません。
この「500万円×法定相続人」という非課税枠ですが、生命保険金等と死亡退職金等の両方で適用することができます。(併用できます。)
仮に法定相続人が3名いて、死亡保険金が1,000万円、死亡退職金が1,000万円、預金が4,000万円ある場合は、相続財産は合計で6,000万円となります。
非課税を考慮すると相続財産は預金の4,000万円だけとなり、基礎控除が4,800万円(3,000万円+600万円×3名)あるため、相続税はかかりません。
みなし相続財産ということに気付かずに、誤って「本来の財産」として申告書に計上してしまうと非課税の適用はできませんので注意が必要です。
以上、【私学共済】遺族一時金という「みなし相続財産」 について でした。