【有利不利】消費税の計算方法について(原則課税と簡易課税)

消費税の計算方法には、原則課税(本則課税)と簡易課税の二種類があります。

この2つの計算方法について記事にしたいと思います。

※計算式・計算例においては、分かりやすいように消費税と地方消費税を区分しておりません。

目次

原則課税の計算方法

原則課税の計算方法

原則課税(本則課税)の計算方法は、利益の計算に似ているためイメージがしやすいです。

一番シンプルな計算式にすると次のようになります。

売上消費税 - 仕入消費税 = 納める消費税

売上消費税(預り消費税)とは

入金されることとなる取引に係る消費税のことをいいます。
取引例としては売上の入金、本業以外での入金(雑収入)、固定資産の売却収入などに係る消費税のことです。

仕入消費税(支払い消費税)とは

支払うこととなる取引に係る消費税のことをいいます。
取引例としては仕入の支払、経費の支払、設備投資の支払などに係る消費税のことです。

利益の計算 と 消費税の計算 の比較

「利益の計算」と「消費税の計算」を比較すると次のようになります。(税込経理/税率:10%/単位:万円)

スクロールできます
利益の計算消費税の計算
①売上高3,300300
②仕入高1,100100
③経費(課税対象 )88080
④経費(課税対象外)1,0000
⑤設備投資(資産計上)55050
利益 / 消費税32070

利益の計算では、①から②③④を差し引いて計算します。

消費税の計算では、①から②③⑤を差し引いて計算します。

なお、③と④の違いは、
「消費税の計算上も経費となるものが③」
「消費税の計算上は経費にならないものが④」となります。(非課税仕入・不課税仕入)

また、④と⑤は次のような勘定科目のことを指します。

簡易課税の計算方法

簡易課税制度の前提条件

簡易課税制度は、中小事業者の事務負担の軽減のため、選択適用できる制度となります。

誰でも適用できるわけではなく、具体例には次のよう2つの要件があります。

  1. 消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していること
  2. 基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高5,000万円以下であること

簡易課税の計算方法

簡易課税では、原則課税のように「売上消費税」から「仕入消費税」を差し引いて「納める消費税」を計算するわけではありません。

「売上消費税」に「みなし仕入率」という一定の割合を乗じて納める消費税を計算します。

売上消費税 - (売上消費税 × みなし仕入率) = 納める消費税

みなし仕入率

事業区分(業種)に応じた次の割合となります。

  • 90% | 第1種事業(卸売業)
  • 80% | 第2種事業(小売業など)
  • 70% | 第3種事業(建設業、製造業など)
  • 60% | 第4種事業(第1種・第2種・第3種、第5種・第6種事業以外の事業)
  • 50% | 第5種事業(サービス業など)
  • 40% | 第6種事業(不動産業)

例えば、第5種事業であるサービス業であれば、売上消費税の50%を「仕入+経費等」の消費税とみなすという方法です。

仕入+経費(課税対象)+設備投資」の消費税額が50%未満であれば、簡易課税の方が原則課税よりも納める消費税が少なくて済むということになります。

原則課税と簡易課税の比較

第5種事業の場合(税込経理/税率:10%/単位:万円)

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利益の計算消費税(原則)消費税(簡易)
①売上高3,300300300
②仕入高000
③経費(課税対象 )8808080
④経費(課税対象外)1,00000
⑤設備投資(資産計上)1101010
みなし仕入消費税150
利益 / 消費税1,420210150

「みなし仕入消費税」は、3,300×10/110×50%=150 となります。
みなし仕入消費税は造語です。何となく伝わると思います。笑)

第5種事業に多いのですが、仕入がない又は少ない業種は一般的には簡易課税の方が納税額が少なくなります

第5種事業の場合(税込経理/税率:10%/単位:万円)

借入をして設備投資を1,100万円した場合

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利益の計算消費税(原則)消費税(簡易)
①売上高3,300300300
②仕入高000
③経費(課税対象 )8808080
④経費(課税対象外)1,10000
⑤設備投資(資産計上)1,100100100
みなし仕入消費税150
⑦借入金1,100
利益 / 消費税1,320120150

借入+設備投資で「仕入消費税」が多いケースとなります。

この場合は、簡易課税よりも原則課税の方が納税額が少なくなります。

有利不利の判定

原則課税と簡易課税のどちらを選ぶかは中小事業者の選択となります。

立法趣旨である「事務負担の軽減」を理由に選択する事業者はほとんどおらず、実務上は「納税額」が少ない方を選ぶことになります。

会計ソフトによっては、原則と簡易のシミュレーションまで出来るものもありますが、エクセル等でも簡単に計算できると思います。

また、原則課税の場合は、納付どころか「還付」もありえます。

簡易課税の場合は、「通常は」還付はありえません。(貸倒れに係る税額控除があれば、簡易課税でも還付はありえます。)

また、今回の記事では説明は割愛していますが、
・簡易課税の2年間の継続適用
・原則課税の3年間縛り
など「単年だけの有利不利の判定ではダメ」なことがほとんどです。

クライアントとの打ち合わせや情報共有、事務所内部でのチェックシート等があれば有利不利の判定を間違うリスクを減らすことができます。

また、正しい業種区分を選べているかも重要な項目となります。

請求書の記載内容のチェック売上を生み出す事業内容のヒヤリングもおろそかにならないようにしましょう。


原則課税と簡易課税の記事を書きましたが、難しい内容は書いておりません。

今回の記事の趣旨は、クライアントに対して「消費税の計算方法には原則課税と簡易課税の二種類があります。」と説明する際の補足資料として記事にしました。

あと消費税の記事が少なかったので。

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